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苺のシャルロットになりたい

薫 エリー

内容第1話  苺のシャルロットになりたい


二年三組、藤谷まさみの遺体が周囲わずか三百メートルほどの小さな島の磯に打ち上げられているという一報が学校にもたらされたのは昨日の昼過ぎだ。職員室の誰もが一様に驚きを隠せないといった表情をしていたが、それは私も同様だった……。どんな困難や苦悩があっても、忍耐と許し、そして希望によって人生は切り開かれる。


第2話  父子手帳


父の葬儀から一夜明けた。しかしよくありがちな湿っぽい雰囲気や一段落してほっとしたというような安堵感はない。朝昼兼用の食事をすますと、五月の心地よい陽気と小鳥のさえずりに誘われるようにして縁側に腰をおろし、裏庭から続くなだらかな斜面に広がるみかんの段々畑に目をやりながら気だるい午後の時間を過ごしていた……。父親にだって、父性ってやつがある。娘を思いやる気持ちは母親以上!?


第3話  DINKS


「おめでたですか?」一週間ほど前のことだ。わたしに突然そう声をかけてきた女性がいた。年の頃は三十代半ば。わたしよりもいくらか若いように見えた。それにこれは別れ際にわかったのだが、彼女はミツキと名乗った。いい年をした女が下の名前をいうわけもないだろうから、たぶん苗字だとは思うが、絶対にそうだと言い切れるたしかな証拠はない…・・・。子供を持たない生き方を選んだ夫婦の身に起こった事件簿。


第4話  ありふれた老後の過ごし方


はぁーあーー。わたしの朝は深いため息からはじまる。まだ朝の六時。こんなに早起きしなくてもいいのについ目覚めてしまう。何時に寝ても六時きっかりに。毎朝この繰り返し。そのたびに自己嫌悪に陥る。二度寝を決め込もうとしても絶対に眠れない。体にその癖が染み付いていてなかなか抜けないのだ。あれからもうだいぶたつというのに……。いたってふつうの、どこでも転がってそうな、いってみればありふれた熟年離婚をした女のあとさき。


第5話  想い出ほろり


あいかわらず尻尾をふっている。なにかが楽しい、うれしいというわけではない。ミクの場合、ただクセみたいなものだ。ミクは生まれて一ヶ月ぐらいだった。それはちょうど、父さんと母さんがなくなってから、それだけの期間が過ぎたことを意味していた。お葬式のとき迷いこんで来たのだ……。少年と子犬をめぐる友情物語。


第6話  アイアムニート


コスプレカフェ。
 半年ほど前、ぼくの街にもこれができた。東京は秋葉原が生んだ、世にも素晴らしい文化がついに上陸したんだよね。ぼくが住む地方都市にも以前からマンガ喫茶やアメリカンスタイルのコーヒーショップなんてのがあったんだけど、そんなのはっきりいってどうでもよかった。マンガは書店での立ち読みになれてるし、コーヒーは自販機のやつで事足りるから。そんなかんじで田舎者のぼくは、東京の匂いがぷんぷんしてきそうなものに、頭から反発していた。それなのに、その考えはがらりと変わった。マンガが読みたくなったら、コーヒーが飲みたくなったら、ぼくは迷わずそこに足を運ぶ。
なぜなら彼女がそこにいるから――。

出版薫 エリー

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