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アルプスの少女デーテ

田中 久三

内容「アルプスの少女ハイジ」をより深く理解したい方、近代ヨーロッパ史を楽しくがっつり学びたい方にお薦めします。

「俺」はフランクフルターツァイトゥングというしがない経済新聞社の記者で、近頃フランクフルトでも開催されるようになったオクトーバーフェストに取材を兼ねて仲間達と繰り出し、そこで貿易商社で働いている女性達と出会う。 その中でただひとり三十過ぎて独身の女の名はデーテと言った。 「俺」はデーテを一人バーに誘い出して彼女の世間話の聞き役になってやった。

デーテはスイス・グラウビュンデン州のマイエンフェルトの出身。両親は既に亡く、姉夫婦が遺した幼い姪ハイディと二人で暮らしていた。 スイスの山奥にも産業革命の波が押し寄せてきて、マイエンフェルトにも鉄道が通り、ラガーツ温泉には保養所が建てられる。ラガーツで住み込みの仲居として働いていたデーテは、フランクフルトから来た裕福な商家の隠居、ゼーゼマン夫人に見込まれ、フランクフルトで働くことになる。

ハイディの母はデーテの実の姉でアーデルハイト。父はトビアス。トビアスの父はアルムおじさんと呼ばれていた。 ハイディの親戚で健在なのはそのアルムおじさんだけだった。 トビアスは鳶職人になったが建築現場の事故で死んでしまう。 アーデルハイトはトビアスの後を追うように死んでしまう。 その後ハイディはデーテの母が育てたが、その母も死んでしまう。

トビアスによれば彼の家系はナポレオン戦争時代に傭兵で財をなした裕福な領主であった。 しかしアルムおじさんの時代に事業に失敗して破産、親戚にも見放される。 アルムおじさんはご先祖様のように傭兵になって再び一財産もうけようと考える。 たまたまイタリア統一戦争が勃発したので、アルムおじさんはスイスからピエモンテに降りていき、ナポレオン三世率いるフランス軍と、ピエモンテ連合軍に従軍する。 アルムおじさんは、ソルフェリーノの戦いで近代科学戦争の惨禍を、また同胞スイス傭兵たちの過酷な運命を目の当たりにする。続いてローマ教皇領、ナポリと遍歴する。 ナポリやシチリアでは終わるともしれない残党狩りの日々が続き、その凄惨さに辟易したおじさんは除隊する。そのまま南国ナポリに居着いてしまい、地元の女性との間に男子トビアスを儲ける。 まもなく傭兵で稼いだ金も尽き、ナポリで始めた大工仕事も失敗して、スイスに帰ることにする。 しかし妻とトビアスを連れてミラノまで来たときに妻はナポリに逃げ帰ってしまう。 アルムおじさんはしかたなくトビアスとふたりでスイスに戻り、マイエンフェルトに住み着いたのだという。

デーテはたった一人で寂しい思いをしているゼーゼマン家の一人娘クララの勉強仲間にするため、一旦アルムおじさんに預けたハイディを連れ出す。 しかしハイディはホームシックにかかり、スイスに送り返される。

デーテは親戚の不幸や、ハイディやアルムおじさんの奇行に振り回され、普通の女性として幸せな家庭を持つことができなかった運命を呪う。 「俺」は閉店までデーテの長話に付き合ってやり、朝のフランクフルトの街角でデーテと別れる。

出版不知所終堂

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